肩を酷使しやすい人へ|毎日3分でできるセルフコンディショニングを理学療法士経験のある畳職人が解説
2026年8月3日

「仕事が終わると肩が重い」
「腕を上げると引っかかる感じがする」
「マッサージを受けると楽になるけれど、数日すると元に戻る」
このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
肩の不調というと、肩だけを揉んだり、無理に伸ばしたりしがちです。しかし肩は、肩関節だけで動いているわけではありません。肩甲骨、背骨、胸郭、首、呼吸などが連動することで、腕を滑らかに動かしています。
私は理学療法士として約12年間、整形外科で肩腱板断裂をはじめとした術後リハビリや運動指導に携わってきました。現在は畳職人として働きながら、身体を整えることと、身体を整えやすい住環境の両方について考えています。
今回は、肩を酷使しやすい方が畳や床の上で毎日行える、約3分間のセルフコンディショニングをご紹介します。
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肩がつらい原因は「肩の使いすぎ」だけではない
肩のつらさには、さまざまな要因が関係します。
- 腕を上げる作業が多い
- 重い荷物を運ぶ
- 長時間パソコンやスマートフォンを使う
- 同じ姿勢を続ける
- 背中や胸郭が動きにくい
- 肩甲骨を動かす筋肉が疲れている
- 睡眠や休息が不足している
- 過去のけがや手術の影響がある
肩関節は非常に大きく動く関節です。その分、周囲の筋肉や肩甲骨の働きによって安定性を保っています。
肩甲骨や背中が動きにくくなると、腕を上げるたびに肩関節だけが無理をして動かなければなりません。
そのため、セルフケアでは「痛い場所を揉む」だけでなく、肩甲骨、胸郭、呼吸まで含めて整えることが重要です。
「姿勢を良くする」だけでは肩は楽にならない
肩がつらい人は、「胸を張って姿勢を良くしましょう」と言われることがあります。
もちろん、前かがみの姿勢が長時間続けば、首や肩の筋肉に負担がかかりやすくなります。
しかし、胸を張り続けようとして背中や腰に力を入れすぎると、かえって疲れてしまいます。
大切なのは、見た目だけを無理に整えることではありません。
必要なときに姿勢を変えられること
肩甲骨や背骨が動くこと
力を入れることと抜くことを切り替えられること
これらが、身体を良い状態に保つためには重要です。
「正しい姿勢を固定する」のではなく、同じ姿勢を長く続けないことを意識しましょう。
毎日3分でできる肩のセルフコンディショニング
痛みのない範囲で、ゆっくり行ってください。
強く引っ張る、勢いをつける、痛みを我慢するといった方法は避けます。
1.呼吸しながら肩の力を抜く|約30秒
畳や床の上にあぐら、長座、正座、または楽な姿勢で座ります。椅子でも構いません。
- 両手を太ももの上に置く
- 鼻からゆっくり息を吸う
- 口から長めに息を吐く
- 息を吐きながら、肩を下へ落とす
- 3〜5呼吸繰り返す
肩がつらい方は、無意識に肩をすくめていることがあります。
最初から大きく動かすのではなく、まずは呼吸に合わせて肩の力を抜きやすい状態をつくります。
2.肩甲骨を前後に動かす|約60秒
両腕を身体の前に伸ばし、手を軽く組みます。
- 息を吐きながら、手を前へ伸ばす
- 背中を少し丸め、肩甲骨の間を広げる
- 息を吸いながら、肘を後ろへ引く
- 胸を軽く開き、肩甲骨を中央へ寄せる
- ゆっくり8〜10回行う
肩甲骨を強く寄せる必要はありません。
腕だけを動かすのではなく、背中や胸郭も一緒に動くことを意識します。
肩の前側に痛みや引っかかりが出る場合は、動きを小さくしてください。
3.胸郭をひねる|約60秒
あぐらや椅子座位など、安定した姿勢で行います。
- 両手を胸の前で軽く組む
- 骨盤は正面に向けたままにする
- 息を吐きながら、上半身を右へゆっくり回す
- 正面へ戻る
- 左側も同様に行う
- 左右5回ずつ繰り返す
腕を上げる動きには、肩関節だけでなく、背骨や肋骨の動きも関係します。
背中が硬くなると、その分だけ肩が無理をして動きやすくなります。
大きくひねることよりも、呼吸を止めずに行うことが大切です。
4.壁や柱を使って腕を上げる|約30秒
壁や柱に手をつけ、指先を少しずつ上へ歩かせます。
- 痛みのない高さまで腕を上げる
- 肩をすくめないようにする
- その位置で呼吸を1〜2回行う
- ゆっくり腕を下ろす
- 左右それぞれ2〜3回行う
腕を無理に高く上げる必要はありません。
「少し動きやすくなった」と感じる程度で十分です。
セルフケアは強く行うほど効果が高いわけではない
セルフケアでは、痛い場所を強く押したり、限界まで伸ばしたりする方がいます。
しかし、強い刺激によって一時的に感覚が変わっても、身体が緊張して動きにくくなることがあります。
セルフケアの目的は、
筋肉を無理やり伸ばすことではなく、身体が動きやすい状態をつくること
です。
終了後に、
- 呼吸がしやすい
- 肩の力が抜けた
- 腕が少し上げやすい
- 背中が動きやすい
と感じられる程度を目安にしてください。
肩だけでなく、日常の使い方を見直す
3分間のセルフケアをしても、残りの時間に同じ姿勢や動作を繰り返していれば、肩の負担は再び大きくなります。
日常生活では、次のような工夫も大切です。
パソコン作業
画面が低すぎると、頭が前へ出やすくなります。画面の高さや椅子の位置を調整し、30分から1時間ごとに一度姿勢を変えましょう。
スマートフォン
顔の下で長時間持ち続けるのではなく、ときどき目線に近い高さまで上げます。左右どちらか一方の手だけで持ち続けないことも大切です。
重い物を運ぶ作業
身体から離れた位置で荷物を持つほど、肩や腰への負担は大きくなります。可能な範囲で身体に近づけて持ちます。
腕を上げる作業
肩をすくめたまま作業を続けず、踏み台などを使って作業位置を下げる方法も検討します。
睡眠と休息も肩のコンディションに関係する
肩のセルフケアというと、運動やストレッチだけに意識が向きやすいものです。
しかし、身体を使った後には、休息と回復が必要です。
睡眠不足や疲労が続くと、筋肉の張りを強く感じたり、姿勢を維持することがつらくなったりすることがあります。
そのため、
- 睡眠時間を確保する
- 入浴や呼吸で身体を休息へ切り替える
- 寝る直前まで仕事を続けない
- 同じ姿勢でスマートフォンを見続けない
- 疲労が強い日は運動量を調整する
といった生活全体の見直しも重要です。
畳の上で呼吸や軽い運動を行い、そのまま身体を休ませる時間をつくるのも、一つの方法です。
畳はセルフコンディショニングと相性のよい場所
セルフケアを続けるには、運動内容だけでなく、始めやすい環境が必要です。
畳の上では、
- 座る
- 四つ這いになる
- 横になる
- 寝返る
- 膝をつく
- 床から立ち上がる
といった姿勢を取りやすく、身体の状態に合わせて運動方法を変えられます。
また、適度なクッション性があるため、硬いフローリングよりも膝や肘をつきやすいと感じる方もいます。
ただし、膝や股関節に強い痛みがある方は、無理に床へ座る必要はありません。椅子やベッドの上でできる方法を選びましょう。
理学療法士から畳職人へ
私は高校卒業後、福岡県の麻生リハビリテーション専門学校、現在の麻生リハビリテーション大学校で学び、理学療法士の資格を取得しました。
その後、2022年7月末まで約12年間、佐賀県武雄市の整形外科に勤務しました。
主に、
- 人工膝関節置換術後
- 肩腱板断裂術後
- 股関節や手足の術後
- 急性期から回復期のリハビリ
- 運動器リハビリ終了後のトレーニング指導
- スポーツ選手への運動指導
- 筋力向上や身体づくり
などに携わってきました。
現在は家業である松下畳商会で畳の製造や施工を行っています。
畳職人になった今も、身体の知識は、畳や和室を提案するうえで大きく役立っています。
畳は、見た目を整えるだけの床材ではありません。
座る、立つ、寝転ぶ、身体を動かす、休む。
人の生活動作を支える場所です。
これからは畳の情報だけでなく、自宅で無理なく続けられるセルフコンディショニングについてもお伝えしていきます。
肩の痛みがあるときの注意点
今回ご紹介した方法は、肩を酷使しやすい方の一般的なセルフケアです。
次のような症状がある場合は、運動を続けず、整形外科などの医療機関へ相談してください。
- 転倒や衝突後から強く痛む
- 腕をほとんど上げられない
- 夜間に強い痛みで目が覚める
- 腕や手にしびれ、筋力低下がある
- 肩が腫れている、熱を持っている
- 胸痛や息苦しさを伴う
- 痛みが徐々に悪化している
- 数週間たっても改善しない
特に、肩腱板断裂や骨折、神経症状などでは、自己流の運動が適さないことがあります。
まとめ
肩を整えるためには、肩だけを見るのではなく、
- 呼吸
- 肩甲骨
- 胸郭
- 背骨
- 姿勢を変える習慣
- 日常の作業環境
- 睡眠と休息
まで含めて考えることが大切です。
セルフケアは、一度に長時間行うことよりも、毎日短い時間でも続けることが重要です。
まずは1日3分、痛みのない範囲から始めてみてください。






