令和8年熊本地震の現状
2026年8月3日

被害を受けたい草産地のために、今私たちができること
令和8年熊本地震により亡くなられた方々に、心よりお悔やみ申し上げます。
また、被害を受けられた皆さま、避難生活や断水などにより不安な時間を過ごされている皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
私たち松下畳商会が日頃から使用している国産畳表の多くは、熊本県八代地域で作られています。
熊本は、ただ畳の材料を仕入れる場所ではありません。
実際に産地を訪れ、い草農家さんと顔を合わせ、い草の栽培や畳表づくりについて学んできた、私たちにとって大切な場所です。
今回の地震では、住宅や交通機関だけでなく、八代市や氷川町のい草産地にも被害が確認されています。
この記事では、熊本県が公表した2026年8月2日14時時点の資料をもとに、現在の被害状況、い草産地への影響、そして私たちが今できることについてお伝えします。
合わせて読みたい
畳のよくある質問50選|畳の寿命・張替え時期・費用まで畳職人がわかりやすく解説【佐賀県の畳店】
令和8年熊本地震の発生と現在の被害状況
熊本県の資料によると、地震は7月28日16時27分に発生しました。
〜参考資料〜
令和8年熊本地震に関する情報 令和8年熊本地震に係る災害対策本部会議
発生直後に災害対策本部が設置され、自衛隊への災害派遣要請や、熊本市を含む21市町村への災害救助法の適用が行われています。
8月2日14時時点で確認されている被害は、次のとおりです。
- 人的被害152名
- 死者38名
- 住家被害4,042棟
- 避難所206か所
- 避難者8,556名
住家被害の内訳は、全壊181棟、大規模半壊20棟、半壊225棟、一部破損1,720棟、分類未確定1,896棟とされています。
被害の全容はまだ調査中であり、今後、数字が変わる可能性があります。
情報を確認するときは、熊本県や各市町村、気象台などの公式発表を優先することが大切です。
八代市・氷川町のい草産地にも被害
今回の地震では、日本の畳文化を支える熊本県のい草産地にも、具体的な被害が確認されています。
熊本県の資料では、八代市と氷川町において、
- い草作業場や倉庫の倒壊
- い草を織る機械や織機の被害
- 用水路の損壊
- い草などへの水供給不足
が報告されています。
い草は、田んぼで育てれば終わりではありません。
収穫したい草を乾燥し、選別し、長さや品質ごとに分け、織機を使って畳表に仕上げていきます。
そのため、作業場や倉庫、織機が被害を受けると、現在保管しているい草や畳表だけでなく、今後の製織や出荷にも影響する可能性があります。
また、い草を育てるには農業用水が必要です。
用水路の損壊によって水の供給が止まれば、今後の生育や農作業にも影響が及ぶことが心配されます。
ただし、生産者ごとの被害状況や、畳表の出荷への具体的な影響については、まだ確認できていない部分もあります。
不確かな情報を広げるのではなく、産地や関係機関からの発表を確認しながら、状況を見守ることが必要です。
熊本は、私たちにとって単なる仕入れ先ではない
松下畳商会では、熊本県八代地域のい草農家さんから、畳表を直接仕入れています。
私たちはこれまで、産地を訪れ、
- い草の栽培
- 収穫
- 選別
- 製織
- 品質の見分け方
- 産地が抱える課題
について学んできました。
一枚の畳を作るためには、畳職人の技術だけでは足りません。
い草を育てる農家さん、畳表に織り上げる生産者、運ぶ人、そして畳として仕上げる畳店。
多くの人の仕事がつながって、初めて一枚の畳になります。
熊本県のい草産地があるからこそ、私たちは国産畳表をお客様へ届けることができます。
今回の被害は、遠い地域の出来事ではなく、私たちの仕事や日本の畳文化に直接つながる問題です。
断水や交通網への大きな影響
地震後、八代市や氷川町などでは、断水や交通機関の運休も発生しています。
8月2日14時時点では、熊本市、宇城市、甲佐町、八代市、氷川町を合わせて、約4万6,700戸で断水が報告されています。
そのうち八代市では約2万5,300戸、氷川町では約3,200戸とされています。
また、九州新幹線や鹿児島本線、肥薩おれんじ鉄道などにも被害が確認されています。
熊本駅から新水俣駅間の九州新幹線や、宇土駅から八代駅間の鹿児島本線では、8月中の運行再開が難しい見込みとされていました。
道路や鉄道が使えない状況では、人の移動だけでなく、救援物資や農産物、畳表などの物流にも影響が出ます。
産地の復旧には、作業場や農地の修理だけでなく、水道、道路、鉄道、物流など、地域全体の復旧が必要です。
避難生活で心配される身体への負担
8月2日時点で、8,556名の方が避難所で生活されています。
避難所では、体育館や公民館などの硬い床で、長時間過ごさなければならないことがあります。
私は畳職人になる前、理学療法士として約12年間、整形外科で術後リハビリや運動指導に携わってきました。
その経験からも、硬い床で長時間座ったり寝たりする生活は、身体に大きな負担がかかると考えています。
特に心配されるのは、
- 腰や膝、肩の痛み
- 床からの立ち上がりにくさ
- 活動量の低下
- 筋力低下
- 同じ姿勢を続けることによる血流の悪化
- 睡眠不足
- 水分不足
- 熱中症
などです。
熊本県は避難所の熱中症対策として、飲料水の供給、簡易トイレの追加、スポットクーラーの配備、在宅避難者や車中泊者への注意喚起を強化しています。
また、熱中症だけでなく、エコノミークラス症候群への注意も呼びかけています。
避難生活では、水分を控えず、可能な範囲で足首や膝を動かし、同じ姿勢を長時間続けないことが大切です。
ただし、持病やけががある方は無理をせず、医療や保健スタッフへ相談してください。
災害時に畳ができること
畳は地震を防ぐものではありません。
畳を敷けば、避難生活の問題がすべて解決するわけでもありません。
それでも、硬い床の上に畳やマットを敷くことで、
- 座る場所
- 横になる場所
- 子どもが過ごす場所
- 高齢者が身体を休める場所
- 着替えや授乳を行う場所
- 家族が集まる場所
を作ることができます。
畳には適度なクッション性があり、硬い床へ直接座ったり寝たりする状態と比べると、身体への当たりを和らげやすいという特徴があります。
一方で、高齢者や膝、股関節に痛みがある方は、床から立ち上がることが難しい場合があります。
そのため、避難所では畳だけでなく、
- 椅子
- 簡易ベッド
- 手すり
- 立ち上がるための支え
- 安全な通路
などを、身体の状態に合わせて使うことが必要です。
畳が向く方もいれば、椅子やベッドが必要な方もいます。
大切なのは、一人ひとりの身体に合った休息場所を確保することです。
今、私たちにできること
被災地のために何かしたいと思っても、何をすればよいか迷う方も多いと思います。
今できることを、いくつか挙げます。
正確な情報を確認する
災害時には、SNSで古い写真や誤った情報が広がることがあります。
熊本県、各市町村、気象台、社会福祉協議会など、発信元が明確な情報を確認することが大切です。
情報を共有するときは、発信日時も確認しましょう。
募集内容を確認してから支援する
支援物資は、必要とされていないものが大量に届くと、仕分けや保管の負担になる場合があります。
物資を送る場合は、自治体や支援団体が募集している品目を確認します。
募金や寄付も、信頼できる公的機関や団体を通じて行うことが大切です。
ボランティアは現地の募集状況を確認する
熊本県の資料では、複数の市町村で災害ボランティアセンターが設置されていますが、募集開始前や受付停止中の地域もあります。
現地へ向かう前に、各市町村の社会福祉協議会が発信する募集条件や受付状況を必ず確認してください。
状況が落ち着いた後も関心を持ち続ける
災害直後は多くの支援や関心が集まります。
しかし、住宅、農地、作業場、設備、地域産業の復旧には長い時間がかかります。
熊本県産の農産物や製品を選ぶこと、現地を訪れること、産地の現状を知ることも、長期的な支援につながります。
畳替えの機会が来たときに、熊本県産い草を選んでいただくことも、い草農家さんや畳表生産者を支える一つの方法です。
ただし、地震を理由に商品購入を急かすようなことは、私たちが望む支援ではありません。
必要なときに、産地や生産者のことを思い出していただければと思います。
自宅の防災も、今一度確認を
被災地を支援することと同時に、自分たちの住まいを見直すことも大切です。
佐賀県でも、いつ地震が起きるか分かりません。
今一度、次の点を確認してみてください。
- 寝室に倒れやすい家具がないか
- 家具が出入口をふさぐ配置になっていないか
- 枕元に靴や懐中電灯があるか
- 家族の避難場所を確認しているか
- 水や食料、薬を準備しているか
- 高齢者が布団や床から立ち上がれるか
- 畳や床に段差や沈み込みがないか
- 避難経路に物を置いていないか
特に古い畳では、隙間、段差、ささくれ、沈み込みがつまずきの原因になることがあります。
防災用品だけでなく、日頃から安全に移動できる床環境を整えておくことも、災害への備えです。
松下畳商会として、今後できること
私たちにできることは限られています。
それでも、畳店としてできることはあります。
- 産地の正確な状況を確認する
- い草農家さんや生産者の声を聞く
- 必要とされる支援を考える
- 熊本県産い草の価値を伝え続ける
- 国産畳表を適正な価格で仕入れる
- 災害時に畳が果たせる役割を考える
- 身体と住環境の両面から防災を伝える
今は、被害状況の確認や救助、避難生活への支援が優先される時期です。
産地へ一方的に連絡を入れたり、支援物資を送ったりするのではなく、現地の状況と必要な支援を確認しながら行動したいと考えています。
状況が落ち着いた後も、産地とのつながりを大切にし、熊本県産い草を使い続け、その価値をお客様へ伝えていきます。
熊本のい草産地を、長く支えていくために
熊本は、私たちにとって単なる畳表の仕入れ先ではありません。
日本の畳文化を支え、私たちの日々の仕事を支えてくれている大切な地域です。
今回の地震では、八代市や氷川町のい草作業場、倉庫、織機、用水路などにも被害が確認されました。
これから被害の全容が明らかになり、復旧に向けた長い取り組みが始まります。
地震が起きた直後だけではなく、その後も関心を持ち続けること。
必要な支援を確認して行動すること。
そして、産地で作られたものを正しく知り、必要なときに選ぶこと。
それが、私たちにできる支援の一つだと思います。
被害を受けられた地域の一日も早い復旧と、皆さまが安心して暮らせる日常を取り戻されることを、心より願っています。






